クロマグロの70%以上を消費する日本人にとって資源減少は大きな問題

栄養が豊富

コレステロールの抑制作用があるとして注目されている「不飽和脂肪酸」であるEPA・DHAをはじめ、タウリン、ビタミン、タンパク質などが豊富に含まれているマグロは、刺身やお寿司の定番メニューとして日本人の食卓に欠かせない存在となっています。

しかし、近年はクロマグロやミナミマグロをはじめとするマグロの資源減少が大きな問題となっています。タイセイヨウクロマグロも含めて、クロマグロの70%以上は日本人が消費しています。

スーパーや百貨店の魚売り場ではニューヨーク沖、スペイン沖、モロッコ沖、マルタ産などタイセイヨウクロマグロが多く販売されていますが、日本人が消費するクロマグロの60%はこのタイセイヨウクロマグロなのです。

ミナミマグロも資源保護を目的として関連国の代表が集まって各国に割り当てられる漁獲量を決めていますが、毎年のように漁獲量は減らされています。

また、急速な経済発展に伴いマグロの消費量を大きく伸ばしている中国、健康志向の高まりから肉に代えて魚を食べるようになった欧米諸国の存在も、日本が輸入できるクロマグロが減少している大きな理由となっています。

クロマグロの養殖実現への高いハードル

海外からの輸入に依存

クロマグロの資源減少を食い止める最善の方法は養殖です。ブリヤタイ、ヒラメなどと同様に養殖が実現できれば安い価格で大量の供給が可能となります。クロマグロを養殖するというアイデアは1970年代にありましたが、卵から養殖することが難しいことから実現できずにいました。

卵からの養殖が駄目なら、と次に考えられたのがクロマグロの稚魚や幼魚をつかまて、それにエサをやることで大きく育てようとしました。しかし皮膚が弱く、水槽の外壁に触れただけで死んでしまったり、共食いもするためクロマグロの育成は非常に困難でした。

大きなマグロを一定の期間いけすで飼育して、トロの部分を増やしてから日本に輸出することも行われています。スペインではクロマグロ、オーストラリアではミナミマグロ、トルコやギリシャ、モロッコなど地中海に面した国々ではタイセイヨウクロマグロが養殖されています。

日本国内では1990年代に入ると奄美大島をはじめとする各地で養殖が順調に行われるようになりました。日本では100~500グラムの小さいクロマグロを2~3年飼育し、30~60キログラムにまで大きくしてから出荷しています。千三両も年々伸びており、年間1万トンに達する勢いとなっています。

しかし、この手法は天然のマグロを捕まえて育てるため、資源が減少することには変わりありません。また、養殖にはアジやイワシなどのエサとなる魚がに大量に必要となります。30キロ以上のクロマグロを育てるためには400キログラム以上のエサが必要となるため、そちらの資源不足が問題となります。また、マグロは泳ぎ続けなければ生きていけない魚ですので、下に落ちたエサは食べることができません。そのため食べ残しによる環境への影響も懸念されているのです。

国内で初めて完全養殖を実現した近畿大学

資源減少で養殖に注目

天然のクロマグロの稚魚を掴まえることなく、卵から養殖する画期的な方法が開発されています。それが近畿大学水産研究所が達成したクロマグロの完全養殖です。

最初の段階は海から天然のクロマグロを捕まえるため従来の養殖と同じですが、大きくなった親魚の卵を取って人口的に孵化させ、この稚魚を育てることでまた親魚とし、卵を生ませて育てるという点に大きな違いがあります。すなわち天然のマグロ資源を利用するのは最初の段階だけで、あとは稚魚から卵を取って養殖できるのです。

当初はクロマグロは生きた餌でしか養殖できないとされていましたが、同研究所はクロマグロ用の配合飼料の開発にも成功したため、お手ごろな価格で安定供給が可能となり、「産業」としての完全養殖が実現しました。

同研究所が育成したマグロは「近大マグロ」のブランド名でマダイやカンパチなど約20種類の養殖魚とともに、グランフロント大阪「ナレッジキャピタル」にある養殖魚専門の料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」で提供されており、2013年12月には東京の一等地である銀座のコリドー街に2号店となる「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所 銀座店」をオープンさせテレビや新聞等のマスコミで大きく報道されました。